窓の防音工事を考察する

窓の交換を検討する

グッズ以外に窓に手を加える方法はいくつかあります。①サッシはそのままにしておいて窓ガラスだけを交換する。②窓ごと交換してしまう。③室内側に内窓を設置する。それぞれについて少し考えてみたいと思います。

窓ガラスを交換する。

窓ガラスが割れた時に窓ガラスを新しいガラスに入れ替える様に、今の窓ガラスを防音ガラスに交換することができるのではないのか?ペアガラスに交換することができれば防音効果が上がり静かにできるのではないのか?このご質問を考えてたいと思います。

確かに住宅用のアルミサッシでも、マンション用のアルミサッシにもはめることができる防音をうたい文句にしたガラスをはめることはできます。例えば防音合わせガラスや真空ガラスです。

でもこのれらのガラスの防音性能を引き出すには、ガラスに見合った気密の高いサッシが必要です。音はごくわずかな隙間でもすり抜けるため、とても密閉性が高いサッシを使わない限りは、これらの防音効果を体感できるまでの静けさを手に入れることはできません。何事もバランスが大切です。

もし、これらの防音性能が高いガラスをお使いになるのであれば、見合ったサッシもしくは内窓を選択してください。

窓を入れ替える。

今の窓を取り外して、防音性能高い窓に入れ替えてしまう方法は、一番素直で奇麗な仕上がりです。ただしこの方法はいくつもの難関があります。

サッシは戸とレールが一対です。レールだけを残して戸を防音性能高い戸に入れ替えることができません。同一メーカーであっても商品ごとに違い互換性が全くないからです。

サッシのレールはその半分が壁の中に潜り込んでいます。ですから、どうしても一部壁を壊さないとサッシのレールを取り除くことができません。そのため防音サッシ工事だけでなく壊した壁を元に戻すと付属工事とが多くなり、雨漏りの原因になる防水作業に細心の注意を払う必要があります。

下の写真のビスを外せばレールも取れるのではないかのかとのご質問をよくいただきますが、違いますので触らないでください。

写真の丸の中にあるビスは、サッシを固定しているビスではありません。

窓の入れ替え工事

サッシの入替にはもう一つの方法があり、この方法はカバー工法と呼ばれます。戸本体は取り外しますがサッシのレールはそのまま残し、その内側にサッシ(戸とレール)を入れ込みますから、壁をいじる必要がありません。雨漏りのリスクは大幅に減ります。

とは言え、この方法も完全ではなく、古いサッシと新しいサッシレールの隙間を、1日経つとゴム状に硬化するマヨネーズ状で防水材パテを充填して埋めるので、いわばゴムで蓋をしただけの状態となり、この部分が防音的には弱くなります。

近年この問題も新しい工法(現場発泡ウレタンによるサッシリニューアル工法)で解消できるようになりました。この工法は以下の点に優れます。

  1. この工法は隙間なく発泡ウレタンを詰め込むことができる。(ウレタンは防音材でもある)
  2. ウレタンはそもそもが防水材である。
  3. 接着力に優れビス固定と遜色がない固定ができます。

この技術を持っている事業者は非常に少ないのですが、私も認定技術者の一人です。

2017年時点ではこの工法が防音的にも優れたカバー工法です。

マンションの場合は難しい工事です。

お住まいがマンションですと窓は個人のものではなく、共有財産とみなされます。そのため、サッシを交換する場合はマンションにお住まいの全員もしくは管理組合、管理会社の許可が必ず必要になります。1世帯だけの工事ですと、他の窓と見た目が揃わないなどの理由から、なかなか許可がもらえません。

内窓を設置して二重窓に

窓交換のように壁を壊すことなく手軽なリフォーム用として開発された窓が内窓です。今の窓や壁をいじることがありませんので、マンションの専有部分(個人所有部分)工事となり、工事の届さえ提出すれば工事は可能です。

内窓はアルミ製ではなく樹脂(塩ビ)製のサッシにガラスをはめたも構造になっています。レールは上下左右の4辺がバラバラの状態で、わざと四角に組み合上げません。取付けは室内側から行い、アルミサッシに接している木製の額縁のような化粧枠にビスで取り付けます。

内窓の外枠(レール)は四角に組上げません。1辺づつ直接木製の化粧枠にビスで取り付けます。

外枠=レールを四角に組上げないのは、額縁の内法(うちのり)寸法ピッタリに隙間なく入れるためです。四角い穴の中にピッタリにサッシレールをはめ込むには実寸より数ミリ小さく製作しませんと、周りを傷めてしまい入れることができません。そして樹脂という柔らかさを利用して写真のようにレールをしならせてはめ込みます。だから内側に隙間なく取付けることができるのです。

内窓は下のような窓には設置することができません。

隙間なくピッタリと設置ができるという防音対策の原則と、ガラスという比重い素材は、比重が重いものほど音を遮断できるという原則にも合致します。(ガラスはコンクリートよりもわずかですが比重が重い。)

そして何よりも透明である事。必要な時には開けて通風ができるという窓本来の機能も確保できます。窓の防音対策で内窓が最もよく使われるのは以上のような理由からです。