ペアガラスは静かなの?続き

前回はペアガラスの防音性能について検討しました。その結果、ペアガラスは平均値で3ミリガラスよりも1.8倍も喧しくなるとの結果が出ましたが、本当にそうなのか?それって正しいのか?が今回のテーマです。

<このページを読み進める上でのお約束事>
記述がない限りペアガラスは「3ミリガラス+中空12ミリ+3ミリガラス」。単層ガラスは3ミリガラスとします。

(補足)
3ミリガラスは住宅使われている窓ガラスの中で最も薄いガラスです。「腰高窓」と僕らが呼んでいる窓に使われ、ガラス寸法で高さ1.3m×幅1mぐらいまでならこのガラスです。23区内など建物密集地においては防災の観点から網入りガラス(厚み6.8ミリ)を使うように法律で定められています。また密集地でもシャッター等が窓についている場合は網入りガラスでなく3ミリガラスでもOKです。

ペアガラスの防音性能を検証 ②

前回の表で6オクターブ分音域と説明をしましたが、実はこれ周波数のことです。100Hzから5,000Hz(5KHz)という広い範囲の周波数を6つに割って計測した値という意味です。

ただ単純に(5000-100)÷6とはなりません。1オクターブとは基準周波数×2倍の関係「2倍音」です。ですからスタートの100Hzから2倍の200Hzで1オクターブ=1グループです。2つ目のグループは200Hzから400Hzとなります。周波数帯域は1つ目の音域幅が100Hzだったの対し、2つ目の帯域は200Hzと均等ではありません。そして、高い周波数なるほど帯域幅は広範囲になります。オクターブバンド解析は音解析の基本ですが、より細かな1/3オクターブバンド分析をよく使います。

そして勘の良い人ならもう気づいていると思いますが、1オクターブを12で割った1/12オクターブバンドはピアノと合致します。ピアノの「ド」から次の「ド」までには、黒鍵と白鍵が合計12あります。これを知っていると「音階」と「周波数」を自由に行き来することも、このことを足掛かりにして「騒音」と「音楽」の相互乗り換えもできるようになります。騒音は嫌われますが、音楽は好きですよね。騒音を音楽の視点で、音楽を騒音視点でとらえると、新しいことが起こりそうだとは思いませんか。このお話はまた別の機会にしたいと思います。

ペアガラスの防音性能値

1/3オクターブバンド(帯域幅)における防音量は下の表のようになります。

数字は防音性能値です。数が大きいほど防音量が大きい=静かにできるということです。

周波数 透明3ミリガラス ペアガラス

(3ミリ+中空12+3ミリ)

100Hz 15dB 19dB
125Hz 15dB 17dB
160Hz 17dB 20dB
200Hz 18dB 18dB
250Hz 20dB 17dB
315Hz 22dB 17dB
400Hz 24dB 19dB
500Hz 26dB 22dB
630Hz 27dB 26dB
800Hz 29dB 30dB
1,000Hz 30dB 34dB
1,250Hz 31dB 37dB
1,600Hz 33dB 40dB
2,000Hz 33dB 43dB
2,500Hz 33dB 44dB
3,150Hz 31dB 42dB
4,000Hz 23dB 31dB
5,000Hz 26dB 34dB

ペアガラスの防音特性グラフ

pg_fl3【グラフの読み方】

①縦軸は防音量を表します。数字が大きいほどより静かにできます。

②横軸は周波数です。左から右に数字は大きくなります。数字が大きいほど「高音」となります。

ご参考までに低周波騒音とは、100Hzに満たない低い周波数を問題にします。低周波騒音は一般的な騒音とはまるで様子が違います。主に「揺れ」「振動」を問題にします。

考察

窓の防音性能評価となる500Hzも出てきました。ペアガラスは22デシベルですからT-1(Ts-25)の基準を満たしていないことも確認できます。

この上記の表を基に単層3ミリガラスとペアガラスの差を求め、なおかつどのぐらい「静かさの差」が生じるのかを周波数毎に計算してみました。

周波数 差(ペアガラス-単層ガラス) 防音比率(音圧)
100Hz 4dB 1.6倍
125Hz 2dB 1.3倍
160Hz 2dB 1.3倍
200Hz 0dB 1.0倍
250Hz -3dB 0.7倍
315Hz -5dB 0.6倍
400Hz -4dB 0.6倍
500Hz -3dB 0.7倍
630Hz -1dB 0.9倍
800Hz 1dB 1.1倍
1,000Hz 3dB 1.4倍
1,250Hz 5dB 1.8倍
1,600Hz 7dB 2.2倍
2,000Hz 10dB 3.2倍
2,500Hz 11dB 3.5倍
3,150Hz 11dB 3.5倍
4,000Hz 8dB 2.5倍
5,000Hz 7dB 2.2倍

分かった事

ペアガラスが3ミリ単層ガラスよりも防音性能が劣る周波数については、赤字で目立つようにしました。お分かりいただけると思いますが、中央列のマイナスの数字は「より喧しい」ということです。右列の倍率も1より小さいということは、「より喧しい」ということです。

  • 分かった事 1

    周波数によって防音量、つまり静かにできる効果は大きく異なる。だから、どの周波数を問題にするかで答えは変わる。 

  • 分かった事 2

    250Hzから630Hzの周波数帯では、ペアガラスは3ミリガラスよりも防音的には劣る。

  • 分かった事 3

    ペアガラスのほうが3ミリ単層ガラスよりも防音効果が高いと、人の耳で判断できるのは、1,000Hz(1KHz)から上の周波数帯である。

  • 分かった事 4

    160Hzより下の周波数帯においてもペアガラスのほうが防音量は大きい。

解説します

  • ポイント1

    騒音を相手にするときに大事になるのは、騒音の周波数を知ることです。その理由は、ガラスは個々に周波数特性が異なり、効果がある周波数と効果がない。むしろ苦手で場合によっては逆に喧しくなる周波数があります。どの周波数においても等しく○○デシベル落とせるガラスはありません。実は、これはどの防音建材にも当てはまります。

  • ポイント2

    250Hzから630Hzの周波数帯においては、最も住宅に使われているペアガラス(3ミリガラス+中空12ミリ+3ミリガラス)は、すべての窓ガラス中でも最も防音性能が低い窓ガラスです。そしてこの周波数帯は人の声の周波数と合致します。

まとめ 簡単に

住宅で最も使われるペアガラスは人の声の周波数帯が苦手です。窓を閉めても外の声がよく聴こえる。エンジンをふかす車の音が気になる。これは当たり前の事なのです。

しかし、全てにおいてダメという訳では決してなく、もし貴方を悩ましている騒音の周波数が2KHzであればペアガラスは抜群に音を小さくすることができるのです。

問題を解決するには、問題の正体を明らかにすること「原因究明」が大事です。
いつも皆さんがしていることです。それなのに騒音のことになると、究明しないで対処する人が多い。
誰だって一刻も早く苦痛から逃げ出したからご相談者は仕方がないと思います。でも、サービスとして提供する側がそれでは問題だと思います。僕が言いたかったのはこのことです。

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